舞台ヲタの視点での『虎者 - NINJAPAN -』の感想のお話。
こんにちは。
ここ数ヶ月投稿をサボっていたのが嘘のように次から次へとエントリーを書いています。
普段もこのくらいのペースで好きなことを吐き出せたらいいのに、ついついめんどくさがってしまうんですよね。。。
さて初日に観劇してから、舞台ヲタとしての雑記と感想を「書いては消してのI love you」をしてたらあっという間に池袋も南座も終わり御園座の千秋楽の日。
今更感もありますがせっかく書いたのでここに置いておきます。
そもそも舞台ヲタには様々なジャンルがあると思います。
宝塚、東宝ミュージカル、2.5次元、来日公演、アングラなどなど。
ジャンルによって特性も様々ですし、いくつかのジャンルを複数掛け持ちしている方も多くいらっしゃいます。
私個人としては観劇のジャンルは東宝ミュージカル、劇団☆新感線、小林賢太郎さんが観劇生活を支える3本柱です。
上記以外にもお気に入りの俳優さん、女優さんが出る舞台を観に行くと言った感じです。
(主に生田斗真さん、林遣都さん、海宝直人くん、常川藍里くん、神田沙也加ちゃん、生田絵梨花ちゃん、笹本玲奈ちゃんなどなど)
好きな俳優さん、女優さんもメジャーどころばかりなので自ずと劇場も上演演目も大衆向けの作品が多いと自覚しています。
今年の上半期の観劇記録はこちら↓
そんなジャニヲタではなく、私の中の舞台ヲタの側面から観た今回の『虎者 - NINJAPAN -』の感想です。
(この先『虎者』のネタバレをたくさん含みますし、自担しゅきめろいえーーい!ではない感想も並びます。)
【セリフが極端に少ない】
これ自体はかなり早い時期のインタビューでも言われていましたね。
一幕を初めて観た直後の私の感想もこんな感じでした。
【虎者 初日 11/2夜 一幕】前触れの通り、台詞よりもパフォーマンスでストーリーを魅せるステージでした。まさに滝沢歌舞伎のシンガポール公演をした年の春公演みたいな感じで、このまま切り取ってラスベガスやニューヨークに持って行ってもいいような言語に頼らないエンターテイメントって感じ!!
— り♡ (@riiiiinats) 2019年11月2日
そうまさに2015年春にリニューアルした『滝沢歌舞伎』を観た時に感じた感想と同じです。
そもそもシルク・ド・ソレイユやストンプ、ブラストなど世界ツアーを行なっているエンターテイメントショーは言葉を使った表現が少なく、音楽と動きで喜怒哀楽、起承転結を表現しています。
今回の『虎者 - NINJAPAN -』も同様です。
今の出来のクオリティが通用するか云々はさておき、構成・演出としては将来一幕だけ切り取って"Japanese Ninja Spectacular Entertainment Show"のようなキャッチフレーズでNY、ラスベガス、パリ、上海、シンガポールなどで上演出来そうなものでした。
まさに言語に頼らないノンバーバルなエンターテイメントと言った感じです。
【コンセプトが良い】
もともと海外で上演をすることを視野に入れていたことを含め、Travis Japanに忍者という設定を与えたのはすごく良かったと思います。
いかんせん海外の方はNinja, Geisha, Samuraiが大好き。
日本がどれだけ発展しても、多くの海外の方は映画や漫画の影響か日本と言えば忍者や侍のイメージが定着しています。
かつてグアムに行った時、イミグレのお兄さんに"Are you Samurai?"と聞かれたので、"No, but be careful she's a Japanese Ninja."とこっそり私の後ろに並んでいた友人が忍者だと教えてあげたら大ウケしていたのを覚えています。
以後忍者や侍の末裔だというジョークを言うとかなりの確率で海外の方が喜んでくれるので「忍者」、「侍」の知名度の高さを思い知ります。
日本人としては別にもう忍者も侍もいないし、もう時代も江戸じゃなくて令和なんだけどなあ…と思ってしまうかもしれませんが、海外ウケを狙うのであれば設定としてはかなりの食いつきが良い設定だなと思いました。
【華やかな演出】
特筆すべき華やかな演出としてOPから順に群舞、アクション、仮面とマジック、ブラックライトとUV加工、タップ、プロジェクションマッピング、ウォールトランポリンと盛りだくさん。
どれも過去にジャニーズ舞台、とりわけ滝沢さんが出演されていた『滝沢革命』と『滝沢歌舞伎』で目にしたことのある演出が中心でした。
だからと言って二番煎じ感はなく、良い塩梅でジャニーズの歴史を継承しながらTravis Japanらしさが加わっているなと思いました。
またシーンによって目玉となる演出が異なるのでその演出を思い出すと自然とそのシーンを想起させてくれるのもよかったです。
個人的にはアクションとプロジェクションマッピングの組み合わせが好きでした。
ここ数年でジャニーズに限らず他の舞台でもよく見かける演出ではありますが、映像と人間の身体の動きのリンクは本当に大変だと思います。
だからこそカチッとハマった時の驚きと感激も大きい。
【アクション】
動けるジャニーズJr.といえばSnow Manの名前が真っ先に出ますが、実はTravis Japanものえるくん(川島如恵留くん)を中心に動けるメンバーが多いのも改めて実感しました。
とりわけアクションをずっとやりたいと言っていたしーくん(吉澤閑也くん)の動きは舞台での本格的な立ち回りが初めてと思えないほどしっかりしていましたし、体幹の強さからか動きに説得力がありました。
(敵に右肩を殴られたら殴られた身体の部位はどういう動きをするか等が自然に見える、みたいな説得力。)
そして忘れてはいけないのが自担の松倉くん(松倉海斗くん)。
Travis Japanの中ではのえるくんがアクロバット代表ですが、実は松倉くんも"Lock Lock"の間奏でマカコをキメたり、コンサートのフリーダンスでブレイクのフロア技を披露したりかなり動けるのです。
加えて関節の動き、筋肉の動きがしなやかなのでしーくんとはまた違った滑らかなアクションが格好良い。
また今回アクション指導をしているのが坂本浩一さんと岩上弘数さん。
少し前にtwitterでもバズっていましたが、両者はアメリカのスーパー戦隊"Power Rangers"のアクションに携わっていた方々で日本のスーパー戦隊や仮面ライダーのアクション指導も担当されています。
スーパー戦隊のアクションでは一見悪者と手下たちがレンジャーと入り乱れて立ち回っているようで、実は一挙一動時間差で殴り殴られをしていて、総入り乱れの中でも動きがぐちゃぐちゃにならないよう計算されています。
実は今年久しぶりに"Endless SHOCK"を観劇した時にジャパネスクで感じた立ち回りの際の強い違和感はそこでした。
全員が総入り乱れになるので、自担を見失うことはもちろん、たまに主役やライバルまで何をしているか分からなくなる時がある。
逆に『滝沢歌舞伎』や劇団☆新感線の公演での殺陣は今回の『虎者』同様に、一太刀、一太刀が観客に分かりやすく、置いてけぼりになりづらくなっています。
これはカレーは混ぜて食べる派か綺麗にライスを縦に切りながら食べる派みたいな好みの違いかと思うのでどちらが良い悪いではありませんが、個人的には後者が好きなので『虎者』のアクションシーンもしっくりきました。
【主役に個人の役名がない】
今回Travis Japanの7名が舞台の主役を務めますが、彼らに役名はありません。
父である朱雀、朱雀の娘 カゲロウ、朱雀の手下であるオオワシ、ハヤブサはそれぞれ個人名があります。
対するTravis Japanの7名は宮近・松倉・松田が「紅孔雀」、中村・七五三掛・川島・吉澤が「碧鷺」とチーム分けのみされています。
朱雀から呼ばれる時も「お前たち」や「息子」としか呼ばれません。
せっかくの初主演舞台、彼らに役名があればもう少しは一幕に感情移入できたのかもしれないなと思ったりもします。
【ストーリーがない】
演出を詰め込みすぎたがためにストーリーはありません。
いや、あるんだけど、やっぱりない。
ストーリーの大枠はパンフレットに掲載の通り、7人兄弟の虎者が悪の帝王である父に立ち向かう話。
それはわかってはいるのですが、どうにもこうにもストーリーのピースが上手くはまっていない。
お話しの順序としても映画などでよくある、結→起→承→転→結と冒頭に結末を持ってくる演出を今回されていますが、基本的にこういうストーリーで悪が完全勝利することはほぼないので蛇足だったかなと思います。
(余談ですが、虎者7人がぎゅっと並び客席に向けた背中に映像を投影する演出は素敵でした。ああいうのをもっと観たかったな。)
そもそも虎者は自分たちの父が悪の帝王 朱雀様だと知らなかったのはいいが、知る前はどんな関係だったのか?(帝王と手下?)、知ってから秒速で受け入れたのは遺伝子レベルで親子関係を察したから??、そもそも紅孔雀と碧鷺はそれぞれ互いが兄弟なことは知っていたのか???など疑問が残ります。
疑問が残るが一幕が終わっても解決はしない。
解決させることができないのであればそもそも父息子という設定に色を加えなければよかったのでは?
ただの正義と悪の分かりやすい戦いではダメだったのだろうか??と思いますが、それが次に繋がります。
【滝沢ストーリーの是非】
結論から言うとただの正義と悪の戦いではダメなんです。
何故ならば滝沢ストーリーにおいて「父」は大きな役割を果たすから。
これはご本人の生まれ育った境遇から来るもので、10年前の滝沢革命の頃から切っても切れぬ縁なのです。
よって滝沢さんが作品のストーリーに携わる限りこの父息子が運命に翻弄される様は描き続けられます。
無論様々な芸術家、偉人たちは過去の自分の経験、境遇を自身の作品に色濃く反映させるので、この行為自体を否定するつもりはありません。
ただ父息子の設定に飽きたと思っているヲタクがいるならばそれは諦めましょうとしか言いようがありません。
(どうでもいいのですが、カゲロウが虎者たちを誘惑するシーンはやっぱり光る竹林だったのかな?教えて滝様!)
【「真(まこと)の虎者」とは何だったのか】
劇中にしばしば登場する「真の虎者」が一体何を指すのかが分かりません。
推測するに「闇に染まらない陽の世界の忍者」だと思うのですが、劇中では「虎者」が何に当たるかは明言されません。
せっかく一幕の終盤で紅孔雀と碧鷺たちが実の父である朱雀に抵抗し「真の虎者」を目指すのにその目指す先が何なのかは曖昧なのが残念です。
【歌が生歌ではない】
ジャニーズ舞台における永遠の課題だと思います。
私個人としてはアイドルの口パクは反対ではありません。
特にコンサートではすごい運動量で全部生歌はかなり至難の技だと思います。
ジャニーズとは別で応援しているハロー!プロジェクトでは生歌でのパフォーマンスが基本ですが、それは彼女たちが生歌用に鍛えられており、振り付けや歌割りも生歌ありきになっているからです。
なんと言うかコンサートでの生歌はウェディングケーキと同義だと思っています。
例え食べれなくても綺麗な部分を来客に見せると言う意味では一緒ではないでしょうか。
他方で海外で上演されているミュージカルでは生歌以外あり得ないという世界です。
日本の東宝ミュージカルでもそうですよね。
口パクのジャンバルジャンは観たことがありません。
さて肝心の『虎者』はというとほぼ口パクです。
初日は元太くんの怪我があり、ショータイムの彼のパートをみんなでユニゾンで歌うにあたり一部生歌となっていましたが、恐らく元太くんが戻っている現在そのパートは口パクになっているのではないでしょうか。
(あくまでも憶測です。)
個人的にはこれは少し残念でした。
今年は横アリ単独、たまアリ合同、8.8祭、サマパラと入りましたが、体感的には生歌4:被せ3:口パク3くらいかなと感じていました。
特にSHOCK組は歌に対するモチベーションも高く、『虎者』も期待できるのではと思っていましたが、結果的にそうではありませんでした。
今後上演前から常々言われていたように世界にこの作品を持っていくのであれば口パクを生歌に変更するのは必須になるのではないでしょうか。
【ショータイム】
ジャニーズ舞台では欠かせないショータイム。
堂本光一さんは"DREAM BOYS"の演出にあたり、ジャニーさんからかつて「本編が良ければショータイムなんていらないんだよ」と言われたことがあるとおっしゃっていました。
ジャニヲタとしても舞台ヲタとしてもこのことについては、そうなんだけど、そうじゃないんだよという相反する意見を持っています。
個人的にはジャニーズ舞台のショータイムは宝塚歌劇のレビューのように一つの演目の文化だと思っています。
ショータイムがないと客が入らないとか、ショータイムがないと客が満足しないのではとかそういうことではないんです。
演劇の本編では役としての自担・推し・贔屓を観て、ショータイムでは自担・推し・贔屓の現世の姿を拝む。
よって私個人としては、ショータイムのあるなしで演劇本編の評価や感想は変わりません。
逆にショータイムがなくてもよかったのに、と思う演目もあります。
その代表作は2009年にシアタークリエで上演されたHey!Say!JUMPの薮宏太くん主演の"She Loves Me"です。
ミュージカルなので作中も歌も踊りもあり、終わりもハッピーでカーテンコールも多幸感に溢れていました。
そこから何故か突然緞帳が下り、A.B.C-Zの河合くん(シーポス役)と五関くん(アルパ役)が登場。
(シーポスとアルパは週替わりWキャストだったので、戸塚さん・塚ちゃんの週もあります。)
「みなさんまだまだ見たいですよねー?」という掛け声とともに薮くんの"Rain Dance"でショータイムが始まりました。
本編で満足したのにその世界観を持って劇場を後にすることができず、最後のショータイム色に塗り替えられてしまう、私の中では少し残念なショータイムでした。
今回の『虎者』や先月まで日生劇場で上演されていた『ABC座 ジャニーズ伝説』では一幕はお芝居、二幕はショータイムとはっきり分かれているのがそれぞれの世界観を壊さずよかったと思います。
あとは『虎者』に関しては将来海外で上演する場合は日本語歌詞の歌ばかりなのでどうするかが気になるところです。
以上が舞台ヲタとしての『虎者 -NINJAPAN-』の感想と雑記です。
多くのインタビューで本人たちも毎年恒例の舞台にしたいと明言しているので、次回再演の際にはまた見え方も変わって新しい感想が生まれると思います。
でも結局舞台ヲタとはいえ、根はジャニヲタなのでどんなにストーリーがトンチキでも、歌が口パクでも結局は自担のお顔とダンスがよければオールオッケー!みたいになってしまうのがジャニヲタの性。
というわけで今日も松倉くんの忍者走りを観に名古屋まで行ってきます。
ではでは。